イノベーション部門賞
3Dセンサと独自開発AIによる3次元認識の複合による配筋検査自動化システム ― GEMBA 3D ―
HMS株式会社(General Exhibits|ブース番号:5H141)
- 【案件概要】
- コンクリート構造物で必須な配筋検査は、限られた検査時間内でほぼ人手のみで行われており、現場の負担も大きく効率化の期待度が非常に高い課題である。3Dセンサと点群処理技術・エッジクラウディングAI技術を活用した仕組みに既存配筋検査帳票作成システムを融合し、ほぼリアルタイムに鉄筋を3Dモデル化し、自動的な設計データ照合と帳票作成の自動化を可能とし、前例のない建築分野での配筋検査の効率化を実現する。
- 【選評】
- 建築現場において現場の省力化、省人化が叫ばれるなかで、設計図面通りに鉄筋が正しく配置されているかを確認する配筋検査は、重要度が高いものの、現状ほとんどが手作業で行われている。AIカメラで撮影し、点群データとRGBデータを合成し3Dデータにすることで、高精度の配筋検査を実現、省力化に貢献している。またレポート作成機能の自動化にも取り組んでおり、建築業界を変革しようとする意欲が、実用性と共に評価された。
スピントロニクス技術を用いた第4の受動素子でAIデバイスの消費電力が1/100に
TDK株式会社(General Exhibits|ブース番号:4H100)
- 【案件概要】
- AIの急速な普及により、ICT領域の消費電力の急増が社会課題となっている。この要因の⼀つが、半導体における電力消費である。メモリスタは人の脳のシナプスを真似たアナログ素子で、抵抗・キャパシタ・インダクタに続く第4の受動素子と呼ばれています。スピントロニクス技術を用いたスピンメモリスタを含むAI回路はデジタル論理計算が不要となり、データセンターからエッジまでのAI製品で超低消費電力化が期待できる。
- 【選評】
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スピントロニクス技術を用いた超低消費電力のニューロモルフィック素子であるスピンメモリスタは、人間の脳を模倣したAI回路となる。抵抗、キャパシタ、インダクタに続く“第4の受動素子”とも呼ばれているメモリスタは、デバイスを通過した電荷に応じて伝導度や抵抗値が変化する素子であり、現在使用されているGPUによる積和演算と比較して1/100の省エネルギー化を実現することが期待される。3年後には12インチウェハによる大口径化の試作、また2030年頃には商品化を目指している。低消費電力の実現によるエネルギーの高効率化、高速動作、学習といったエッジ環境でのAI活用の広がりなど、今後の技術進展への期待と市場開拓性が評価された。
最先端半導体の高性能化、省電力化に貢献するコンデンサ/インダクタ内蔵基板(iPaS)
株式会社村田製作所(General Exhibits|ブース番号:6H104)
- 【案件概要】
- AIやIoTの進展に伴いデータのトラフィック量が急増する中で、高性能な半導体パッケージが求められている一方で、消費電力量の増加が問題視され、ハイパフォーマンスと省エネルギー化を両立することが課題となっている。 iPaS(アイパス)は、村田製作所が専用に開発したコンデンサやインダクタなどの部品を内蔵し一体化した基板製品で、広い搭載面積を要するSMD部品を一括で基板内に内蔵することで、顧客製品の省スペース化、省電力化、高機能化へ貢献する。
- 【選評】
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コンデンサやインダクタなどの部品を内蔵、一体化した基板製品で、搭載面積として広いスペースを要するSMD部品を一括で基板内に内蔵することで、省スペース化、省電力化、高機能化に貢献することが期待される。実装面積に制限がある製品において有効であり、省電力化に特化しつつノイズ除去を実現している点が評価された。AIやIoT活用の進展に伴うデータのトラフィック量急増に対応する半導体パッケージの高性能化と省エネルギー化という、将来性を含めての評価となった。
ネクストジェネレーション部門賞
同期・マルチチャネル バッテリフリー無線センシングシステム
慶應義塾大学後方散乱通信研究コンソーシアム(Next Generation Park|ブース番号:5H221)
- 【案件概要】
- 無線給電と電波の反射を利用するバックスキャッタ通信を組み合わせて、市販センサに無線給電しながら無線通信を実現する無線チップと読取装置、無線通信プロトコルを考案・開発した。バッテリ不要で超軽量(1g未満)の無線センサを実現できるため、人工物などに埋め込み、運用中も含め随時、センシングが可能である。さまざまな実証実験を推進するとともに、ISOの新しい無線通信プロトコルとして日本発の標準化を推進している。
- 【選評】
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バッテリ不要で、マルチチャンネルでセンシングできるRFIDの上位互換となる進化拡張版とも言える技術であり、市販のセンサに無線で給電、通信することで、あらゆるものにIoTセンサをつけることが可能になる。従来ではセンシングが困難だった場所などにも応用でき、老朽化するインフラのセンシングや、ロボット、故障予防、予知保全など、応用分野が広がる可能性にも期待が寄せられた。2025年には国際標準成立を目指すとしており、標準化をリードする活動や実証実験などの長年による努力の成果が評価された。
CMOS/スピントロニクス融合AI半導体
国立大学法人東北大学(国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構ブース内|ブース番号:5H102)
- 【案件概要】
- データ処理量の増大という課題を解決すべく、CMOS技術とスピントロニクス技術を高度に融合させたCMOS/スピントロニクス融合技術をベースにした、エッジAIコンピューティング技術を開発。本研究開発では、それを効率的に設計する技術開発、エッジサーベイランスシステムと車載系への搭載を目的とした応用研究を行う。
- 【選評】
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AIエッジコンピューティングの課題は発生する大量の消費電力であるが、現在主流のCMOS技術および、不揮発性で面積効率の高いスピントロニクス技術を融合し、高い電力効率のコンピューティング技術を実現している。商品化時期は2029年としているが、グローバル某社におけるラインの検証が完了しているなど着実な足跡が評価され、またITエレクトロニクスおよび自動車などわが国の重要産業の基盤となる、半導体産業の競争力強化に繋がるものとして今後への期待も評価された。
コ・クリエイション(共創)部門賞
Reposaku(レポサク) - 超高精度GPSロガーで「挿すだけ・カンタン・農業DX」を実現
エゾウィン株式会社(デジタル田園都市国家構想特設パビリオン内|ブース番号: 3H091)
- 【案件概要】
- 北海道標津町のスタートアップである、エゾウィンが開発した「挿すだけ・カンタンDX」を実現するプロダクト。GPSロガーを車両の電源に挿すだけで、全車両の正確な作業位置をリアルタイムで描画する。進捗確認を容易にし、無駄な移動を削減した結果、作業効率18%向上を実証。加えて事務作業の負担も58%削減されるなど、ストレス軽減の効果も実証。高精度データを用いた日報出力や分析も可能である。
- 【選評】
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準天頂衛星システム「みちびき」を利用することで、誤差12cmの作業軌跡を得ることが可能。北海道では2040年には人口が半減する場所がほとんどであり、農業DXのニーズが高まっている。トラクターなど農作業用車両にGPSロガーを取り付けるだけで、データ取得と描画が開始できる手軽さと、導入のシンプルさにより農業DXが実現でき、高齢化や離農などによる人手不足の課題解決に対し、期待が寄せられた。また、同じく「みちびき」を使用するSLAS(サブメータ級測位補強サービス)では、牧草地などは対応できても畝作りが必要な農業DXには精度が不十分であるとして、GPSロガーを自社開発するなどの熱意、技術力も評価された。
水中フュージョンセンサ
株式会社トリマティス(海洋DXパビリオン内|ブース番号:2H098)
- 【案件概要】
- 海中・水中での3Dデータをリアルタイムで取得するセンサ。水中で伝搬損失の少ない可視光レーザを三色(赤、緑、青)搭載し、季節・海域ごとに使用する光源を切り替え、従来は不可能だった水中の詳細3Dデータを高速に計測可能。さらにRGBカメラも内蔵し、水中での色付き3D点群情報が取得可能。将来の海中・水中におけるAIを推進するうえで学習データの取得にも貢献する。
- 【選評】
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3色LiDARとカメラを融合し、可視光領域の3色レーザを用いたことで、水中でもLiDARによる計測情報の取得が可能となった。カメラからの色情報を融合することでリアルタイム計測が可能となり、生け簀を泳ぐ養殖魚など、水中で動く物体の形状や個数を計測する用途に加え、船体検査や水中のインフラ点検の自動化などにも応用できる。地上では当たり前に使われている3色レーザ技術を海中でも使用できるようにし、海中・水中の見える化、ネットワークの実現など、世界初の技術である点をふくめ、今後の3Dデータの活用および海洋DXに大きく寄与することが評価された。
グローバル部門賞
Data doesn't flow on rainbows
Gaia-X European Association for Data and Cloud AISBL (グローバルパーク EUパビリオン内|ブース番号:5H234)
- 【案件概要】
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Gaia-Xはソフトウェアと仕様を提供し、企業や個人がデータを管理することなく交換・共有できるようにする。 ソフトウェア・コンポーネントには、コンプライアンス・エンジン、レジストリ、公証人が含まれ、これらはGaia-X Digital Clearing Houses(GXDCH)によって展開される。これらのツールは、Gaia-Xが設定した標準に準拠した方法でデータが交換されることを保証するために連携し、参加者がデータ共有活動に従事しながらも、データの管理を維持できるよう支援する。
- 【選評】
- ヨーロッパ主導の自律分散型の企業間データ連携のコンソーシアムで、欧州だけで300社、日本企業もルール作成や運用に関わっている。1社のみでデータを独占する他のプラットフォームと比較して、製品の上流工程からエンドユーザーまでのデータを一元管理することも可能。データ連携の推進により、企業とユーザーの両方が恩恵を受けられることが期待されている。利用が広がることで、データ流通を促す重要な基盤となることが評価された。
Neuro ID® :
The Ultimate Secure Biometric Solution
YNEURO(グローバルパーク EUパビリオン内|ブース番号:5H234)
- 【案件概要】
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ニューロIDは、各個人のユニークな神経シグネチャーを利用することで、本人確認を一変させる先駆的なバイオメトリクス認証システムです。従来の方法とは異なり、Neuro
IDは、複製が不可能な神経パターンを活用することで、安全でプライベートかつシームレスな代替手段を提供します。この技術により、パスワードや物理的な生体認証が不要になり、セキュリティ侵害のリスクが大幅に軽減される。適応学習機能により、認識精度が継続的に向上し、高度にパーソナライズされたユーザー体験を提供します。
- 【選評】
- 脳波を、複製が不可能な生体認証データとして活用することで、パスワードや物理的な生体認証を不要とするソリューション。小型のEEGセンサーの場合、ノイズ耐性に課題が感じられるが、実現すれば新しい認証基盤となる可能性を秘める。その新規性やイノベーションにチャレンジしている意気込みが評価された。また、実現した際に広がる応用の幅広さなどの将来性にも期待が寄せられた。