フューチャーソース・コンサルティング 最新市場 分析レポート

Vol. 218

パンデミックが高級オーディオ製品の需要を加速させた要因

2021年02月28日

2021年2月5日 – ここ数年、オーディオ市場では、より高級な製品へのシフトが如実に進んでいるのを目の当たりする。例えばヘッドフォン市場では、AppleのAirPods ProやSonyのWH-1000XMシリーズなどのモデルが相次いで開発、発売され、マスマーケットでのオーディオ製品の高品質化に貢献している。この高級化路線は、ワイヤレススピーカーやサウンドバーを含むほとんどのオーディオ製品カテゴリーで見られるものだが、2020年にはまた別の展開を見せた。

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミックにより、消費者が家に籠ったことで、高級オーディオ製品の需要が拡大するという、これまでに無い傾向が生まれている。

ロックダウン中の消費者の娯楽として、映画や音楽を楽しむ向きが多くなり、自宅のオーディオ品質がこれまで以上に重要な意味を持つようになっている。サウンドバーセグメントでは、Dolby AtmosやDTS:Xを搭載した高級サウンドバーで、自宅で映画館の体験を再現しようとする消費者が、1,000ドル以上の価格のモデルの需要を牽引している。これに伴い、 Futuresource’s Home Audio reportによれば、出荷台数は2020年第1四半期から第3四半期にかけて前年同期比32%増と大幅に伸びている。多くの人々の休日の外出や外食などにかかる支出が減ったことで、他に回せる剰余が生まれ、それが高級オーディオ製品への支出にまわっている。2020年は、これまで高級なスピーカーやアンプ、ターンテーブルなどの製品に投資したいと考えながら、躊躇していた消費者が、投資を正当化できる年であり、最終的には多くのオーディオ製品カテゴリーで平均販売価格が上昇している。

2020年には5,000ドルを超える高級オーディオ製品の需要も過去最高を記録している。

また、ロックダウン中にレコード盤の販売が急増したことと、富裕層を中心に資金的余裕があったことが相まって、価格が2万ドルを超える超高級ターンテーブルへの強い需要が生まれた。Futuresourceが最近発表した Luxury Audio Reportでは、5,000ドル以上のターンテーブルへの消費者の支出が2020年には15%の驚異的な成長を遂げたことを取り上げている。

この高級デバイスへのシフトを示すもう一つの堅固な証拠として、AppleがAirPods Maxで販売価格549ドルの高級のヘッドフォン分野に進出したことでも分かる。Appleのこの動きは、消費者が高品質のサウンドだけでなく、高級な素材を用い、より多くの技術的機能を統合した製品にこれまで以上に支出することを厭わないことを確信していることを示す。

2020年はある意味例外的な状況ではあるが、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミックによって消費者のライフスタイルが長期的な影響を受けることも予想される。特にリモートワークが一般的になり、通勤や出張需要が減少すると予想されている。コロナ後の世界は、より家庭に焦点が当てられ、消費者が家庭で音楽を聴いたり、映画を観たりする機会が増え、結果的に家庭用オーディオ製品の品質がより重視されるようになると思われる。

Futuresourceは、この傾向が高級オーディオ製品の長期的な成長を牽引すると予想している。特に、高音質を体験した消費者は、リスニング体験をより完璧にするためにアップグレードしたり、最新のハイテク機能を採用したりする可能性が高いからである。

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