ヘッドホンに対する消費者の需要はここ数年、大きく伸びてきました。技術進歩の継続とライフスタイルの選択肢の増大により、ユースケース(使用事例)が拡大し、新たなヘッドホンの開発を促しています。結果として、そのような製品は、人間工学をより濃厚に反映し、装着時間の延長化を可能にする一方、環境の変化を踏まえて適応性を高めるべく、直感的で使いやすいものになってきています。先月開かれたFuturesourceのオーディオ・コラボラティブのイベントで話し合われたのが、まさにこのテーマでした。そのセッションについては、こちらで確認することができます。
健全な市場成長と消費者によるブランドの選択
オーバーオール型ヘッドホン市場は、2025年にかけて順調に15%の成長を遂げようとしており、音楽以上のユースケースが確立してきています。完全ワイヤレスイヤホン(TWS)市場は依然として力強く成長しており、現在では新型ヘッドホンの全売上高の50%超を占めています。在宅勤務、オンライン学習、フィットネス、ゲームが、パンデミック下の重要なユースケースとして浮上し、長期にわたって定着しようとしています。TWS分野のリーダー企業はAppleであり、4分の1近い市場シェアを占めています。Futuresourceの「音響技術ライフスタイル」消費者調査によると、消費者の3分の2が、自分の持つスマートホンと同じブランドのTWSを購入したいとの意向を示しています。これは、シームレスなユーザーインターフェースとエコシステムの体験に根差すものであり、このカテゴリー分野におけるSamsungやXiaomiの業績向上にも一役かっているトレンドです。
業界はリスニング体験の向上に注力
ヘッドホンとヒアラブルの融合(コンバージェンス)における最大のトレンドは引き続き、より高品質な音質の追求し、消費者のリスニング体験を向上させることです。これを実現するには、音楽のリスニングに限定されない、高品質な音響機能の導入が必要となります。ヘッドホンの非音楽系の機能が充実してきたことにより、いわゆる”ズーム疲れ”の軽減と、その実現のために音質を改善させる方法への注目が高まっています。これは、ヒアラブル機器が昼夜を問わず長時間使用される現状においては、避けられない事態でもあります。音質はヒアラブルの領域を超えて、ユーザーを補助するようなヒアリング体験により関係してくるのかもしれません。消費者が音を聴くのを単に手助けするだけにとどまりません。ユーザーは、騒がしいレストランや公共交通機関のような、より厳しい環境でより良い音を聴けるようになる必要もあるのです。
どのような重要機能が開発されようとしているのか?
チップセットのベンダーによるオールインワン・タイプ(一体型)のSOCの開発は既に、100ドル未満の機器に内蔵されている音声アシスタントやANCのように、機能統合の面で役立ってきています。追加機能としてのANCの人気は引き続き高まっており、2021年第1~3四半期には、TWSの全出荷量の3分の1近くを占めました。バイオメトリックセンサーと論議を呼んでいるエンハンスメントテクノロジーとの統合により、ヒアラブルの領域が広がって、その有用性とビジネス機会を向上させています。しかしながら、こうした機能の開発には、バッテリーの消費量と消費者のニーズとの間の妥協点がつきものです。ベンダーはそうした消費者ニーズに応え、ユーザー体験の向上という最大の目標を達成しようとしています。
ヒアリングの健全性(ヘルス)の追求には、明らかに大きなマネタイズの機会が伴います。エコシステムの巨大企業はその機会を捉えるべく、ヒアリングの健全性に立脚したサービスに関するあらゆる追跡データや成果から得た有効な洞察的知見を駆使して、開発に注力しようとしています。
オーディオの融合に向けたこのトレンドが引き続き強まる中、実効性のある次のステップはBluetoothの低エネルギー機器の生産です。その機器を通してバッテリーのサイズをより小さくし、それに合わせてより小型の機器を生産し、結果として装着者が感じる快適さを長時間にわたって高めていくのです。
次世代の製品とは
ヘッドセット業界が実現する先進性に起因するヘルス分野の優位性は、新たに多大なビジネス機会をもたらします。脳の活動や心拍をモニタリングできるヘッドセットが実現すれば、SFの世界が現実化するでしょう。
こうした機器がコンセプトから現実へと移行するためには、計算能力の強化がカギとなります。より高い計算力と処理能力があれば、ユーザーは、良い音と悪い音を聴き分ける力を得ることになり、自身にとって最適なオーディオ体験を自ら手に入れられるようになるのです。