フューチャーソース・コンサルティング 最新市場 分析レポート

Vol. 239

エンタープライズAVハードウェア市場は成長の構え

2022年03月31日

企業のAV予算は増加しており、IT意思決定者は専用の会議スペースや在宅ワークにプライオリティーを集中している。
コラボレーティブコマースという新しい世界ではハイブリッドワークが普及しているようだ。
この知見はFuturesource Consultingの年次エンタープライズエンドユーザーレポート(Enterprise End User Report)によるものである。
このレポートではアメリカ、フランス、ドイツ、イギリスのITおよびAVマネージャーに聞き取り調査を行っている。

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「企業のランドスケープが劇的に再編されつつある」と述べているのはFuturesource ConsultingのディレクターであるChris Mcintyre-Brownだ。「パンデミック以前は75%のワーカーはフルオフィス勤務だったが、現在ではその割合はたった25%にまで下がった。そして意思決定者も従業員も、長い目で見ればハイブリッドワークが定着する可能性が高いと言う」

「同時に、デジタルネイティブ世代(1980年以降に生まれテクノロジー中心の環境で育った世代)が企業の世界において割合を増し続けている。2020年の時点では全従業員の54%だが、2030年までにはワーカーの4人に3人がデジタルネイティブ世代になるだろう。この集団は働き方やスペースに対してだけでなく、テクノロジーによる日々の業務のサポートに対しても大きな期待を寄せている。コラボレーティブワークの実践のあり方がリセットされつつあり、そのことがAV業界の経営者の多くに利益の機会を与えている」

さらに若い世代がリードする

Futuresourceの調査によると、さらに若い世代、特にミレニアル世代とZ世代は、新しいスタイルの会議の採用により積極的だ。彼らはリモートで会議に出席することを、年上のスタッフほどには妥協であると感じていない。また、コンテンツ作成や修正のためにグループワークが行われる会議にも彼らが参加する割合が増えている。

デバイスの使用に関しては、より若い従業員は自分のデバイスを使うことへの選好も示している。彼らが会議でコンテンツをシェアしたり、ディスプレイへの接続にスマートフォンを使うことが増えている。

従業員全体の中でも個人デバイスの使用が増えている。仕事のメールや仕事関連のサービスへのアクセスにも使われるスマートフォン以外にも、回答者の3人に1人が会議室で個人デバイスを使っていると答えている。このことはIT部門に、主に会議室のAV機器との統合、サポート、大きなデータセキュリティーリスクに関する多くの問題を提示する。

増加する会議室

会議室の数は西ヨーロッパで1000万近く、アメリカで900万近くに上り、エンタープライズ市場はテクノロジー提供者にとってますます魅力的なバーティカル市場となっている。今や、企業は管理下の場所にある会議室の数を明らかに増やそうとしている。そのうち主要な投資がフォーカスするのは小会議室(1-6人用)と大会議室(15人以上用)である。

調査によると、専用のミーティングスペース以外にも、その場限りのスペースを従業員が会議に使う傾向が継続している。「企業の大半がこの傾向を認識し、そのようなスペースのためのテクノロジーに投資している」とMcintyre-Brownは述べている。「実際3分の2以上が、これを将来的に中程度から高程度のプライオリティーであると見なしている」

このようなスペースのサポートは短期的には企業に課題を提示する。特にコラボレーティブ、ハイブリッド、デジタルなワークに対する準備が整っていない人々に対してはそうである。一方、それはサプライチェーンが乗じることのできる多くの新しい機会も提供する。

AVハードウェアにはまだ改善の余地がある

「現在インストールされているテクノロジーは主に基本的なAVハードウェアだ」と Mcintyre-Brownは述べている。「ディスプレイデバイスや電話デバイスは普及しており、会議室の要件は大体は満たされていると従業員は感じているが、我々の調査においてはどの会議室設備も特に高いスコアは示さなかった。また、従業員は重要度と満足度に従ってテクノロジーに優先順位を付けるのに苦労していた」

「このことは従業員の必要を満たすうえでの課題を意思決定者に提示する。今後の投資プランに関しても不確定性が存在し、サプライチェーンからの導きの必要性が強調される」

AVにおける将来的なベンダーの機会

基本的なAV機器以外にはテクノロジーのインストールベースは比較的低く、まだ活用されていない機会をテクノロジー提供者に提示している。コラボレーティブなツールへの出費を企業は増やすだろう。そのようなツールは業界が主にフォーカスしているものであり、ハイブリッドワークのサポートに重要なものであるが、現時点ではあまり活用されていない。業界は長期的には、より広いエコシステムにおいて見られるイノベーションや急速な発達に接続しつつ、より没入感のあるハイブリッド会議環境のためのツールを提供することによりフォーカスするだろう。

業界が前進するにつれ、 プロAVソリューションとIPソリューションの間により緊密な関係が構築されつつある。配信ツールやイベントツールがビデオ会議ツールと融合し、企業が従業員や顧客とより豊かな交流を行うことを可能にしている。これらの新しいソリューションはますます幅広いエンタープライズツールと共に機能する必要がでてきており、接続ソリューションの提供者に課題を提示している。しかしこれはAV管理型サービスやホスト型ソリューションにとっての機会ともなっており、未来のランドスケープの主要な特徴となるであろう。