フューチャーソース・コンサルティング 最新市場 分析レポート

Vol. 210

アクティブノイズキャンセリング機能の台頭がヘッドホン業界にもたらす意味合い

2020年10月31日

-アクティブノイズキャンセリング(ANC)機能付きのヘッドホンは、過去数年間で明らかに増えてきており、市場シェアは2018年の7%から昨年は9%を占めるまでに増加している。2020年には、市場のおよそ20%を占めると予想されている。Futuresource ConsultingのヘッドホンアナリストであるLuke Pearceが、ANCの台頭と、それがヘッドホン業界の将来にとって何を意味するのかを探る。

ANCは当初、一般旅行者を対象に、オーバーイヤー・ヘッドホンに導入された。この機能付きのヘッドホンはプレミアム価格で売り出され、Bose、Beats、Sonyなどのブランドがこの市場で先行した。使用事例の増加とテクノロジーの改善により、ANCはその後、よりアクセスしやすく、より多くのユーザーを対象とするようになった。元来この機能をヘッドホンに組み込むには、より多くのスペースを必要としたが(当初オーバーイヤーへの導入に限られた要因である)、現在は、はるかに小さなワイヤレスヘッドホンにも組み込めるほどに小型化している。AppleのAirpods Proに搭載されたことで、需要の増加は加速した。その結果、2019年にはオーバーイヤーでないワイヤレスヘッドホンがANCヘッドホンユニット全体の27%を占め、より多くのブランドがANC機能の搭載を始めていることで、この傾向は急速に拡大すると予想される。2020年の終わりまでに、AppleはAirpods Proの成功の直接の結果として、より多くのシェアを獲得すると思われる。

北米はANCの最大の市場であり、昨年の出荷の3分の1以上を占めている。ただし、中国ブランドのANCヘッドホンの流入により、アジア太平洋地域において、今後供給が低価格帯にシフトし、世界の需要に大きな影響を与えると思われる。

ANCヘッドホンに対する需要の減速の兆候は見られない

今年のヘッドホン市場におけるANCの18%シェアは印象に残る数値であるが、これはまだ初期の段階の数値に過ぎない。2024年までには、ANCが市場の約60%を占めると予測している。この伸びは、消費者へのアピールと技術の進歩の両方が合わさって実現する。

ヘッドホンのコストの低下とサイズの縮小

小型化技術はこうした傾向に大きく貢献している。必要なコンポーネントが非常に小さくなったため、イヤホンの小さなスペースに収まるようになった。さらに、ワイヤレスイヤホンにANCを搭載するためのコストは、比較的短時間に劇的に低下した。我々の調査では、わずか2年前と比較してコストはほぼ3分の1に低下している。その結果、ANCはより手頃な価格の製品でも搭載が始まっており、早ければ来年には100ドル未満のセグメントでの存在感も高まると思われる。

需要の増大と技術の進歩に伴い、ANC搭載をめぐる競争も激化している。クアルコムなどの多くのシステムオンチップ(SoC)ベンダーは、この機能を自社製品に組み込んで、簡単なオールインワンソリューションを実現している。クアルコムの最新のSoCには、統合ハイブリッドANCと、外部音の取り込みを可能にするリークスルー機能が含まれている。

新しい使用例でのアクティブノイズキャンセリング機能の台頭

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミックにより、世界的に独特の状況が生み出され、より多くの消費者が屋内にとどまり、自宅で仕事や勉強をする必要が生まれた。この「ニューノーマル」により、ANCはヘッドホンに搭載されていることが望ましい機能となり、消費者は、仕事の電話中やオンライン授業中に、子供、ペット、隣人からの環境の煩わしいノイズを制御できる。

消費者の需要がかつてないほど高くなっていることは間違いなく、ANCは現在、オーディオ体験に付加価値を与える品質の目印としても認識されている。最近実施した、Futuresource Audio Tech Lifestyles 消費者調査 では、回答者の半数以上が、ヘッドホン購入検討の際に、ANCは重要または極めて重要な機能であると述べている。

ヘッドホン市場におけるANCの未来

ANC搭載は、まもなくヘッドホンにとって当たり前にあるべき機能となる可能性が高いため、ブランド各社にとって、ANCを正しく取り扱うことが大きな課題となっている。搭載が当たり前となる代わりに、ANCの品質と出来栄えをめぐって新しい戦いが出現しており、最高の製品は、製品デザイン、チップパフォーマンス、およびソフトウェアとの完全な調和を提供している。主要ブランドは、アプリベースのパーソナライズモードと外部音取り込みモードを通じて顧客体験を改善することで製品の差別化を図っている。こうした機能は、消費者が周囲の騒音を制御することを可能とする。iOS14の一部としてリリースされたAirPods Proの「ヘッドホン調節」機能では、外部の音を増幅して軽度の聞き取りにくさを修正できるように調整された「外部音取り込み」モードなど、いくつかのエキサイティングな開発がすでに取り込まれている。

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