フューチャーソース・コンサルティング 最新市場 分析レポート

Vol. 108

Integrated Systems Europe ISE2016で期待できること

2016年02月05日

FuturesourceのProfessional Displayチームでは、2月9日から12日にかけてアムステルダムRAI展示センターで開催されるIntegrated Systems Europe 2016(#ISE2016)にて各ホールを探索し、展示製品を詳しく調べるための準備がすでに整っている。

今回のミッションは、ホットなトピックス、トレンド、さらには複数の業界でエンドユーザーに対する統合システムのサプライチェーンでの利用が促されているテクノロジーや製品の情報をつかむことだ。この情報はビデオウォール、ワイヤレス、企業エンドユーザー、バーチャルリアリティー(VR)、4Kといったプロフェッショナルディスプレー分野を含めて「Futuresourceレポート・ポートフォリオ」の中で特集される。

これまでで最大のISEとの前評判で期待が高まっていることもあり、Futuresource Consultingでは展示が予定されている最先端テクノロジー・製品のいくつかをシェアしたいと考えている。以下ではフロントプロジェクション、コマーシャルフラットパネル、ワイヤレスプレゼンテーション・ユニファイドコミュニケーション&コラボレーション、さらにはバーチャルリアリティーをカバーする。

フロントプロジェクション– ソリッドステートイルミネーション、4K、アプリコントロールが主要テーマに

Futuresourceでは、ソリッドステートイルミネーション(SSI)が今年のISEでのフロントプロジェクションの中心になると予想している。レーザーフォスファ・ソリューションのスペクトラムは、様々なブランドから低くて明るいモデルがリリースされるにつれて広がっていくとみられる。大型施設での設置に至るレーザーフォスファの販売収入は2015年に410%増加し、セグメント収入の6%超を占めるようになっている。

主なアプリケーションでのSSI採用は、費用に敏感な市場で価格が設定されているソリューションが十分ないことが障害となっている。ただしISEは、この業界にいる主要プレーヤーから教育をターゲットとして、さらに多くのレーザーフォスファのウルトラ・ショート・スロー(UST)ソリューションがリリースされるとみている。これによりトラクションがさらにもたらされるのは間違いないだろう。さらに、Philipsは今回の展示でColorSpark HLDテクノロジーの開発を発表すると予想されている。この技術はLEDとレーザーフォスファのギャップを埋める可能性があるため、SSIがランプをベースとするソリューションを代替する時期が早まるだろう。この製品はボリューム市場においてランプの真の代替品になるだろう。

昨年のISEではピクセルシフト4Kが主要テーマだったが、今年はさらなる発表が期待できる。しかしTexas Instrumentによる最新4Kホームシネマチップのデモは、レビューが概ね好意的だったこともあり熱い視線が期待されている。このチップは同社のコマーシャル3チップの1080pソリューションに対抗する存在になるとみられ、B2C及び B2Bアプリケーションの両方で現在の解像度ダイナミクスを破壊する潜在力があるのは確かだ。

プロジェクションにおいてアプリコントロールは以前からあったものだが、市場ではニッチ的な存在にとどまっている。しかしながらFuturesourceでは今回の展示で多くのベンダーがアプリコントロールへの互換性(MHL, Miracastなど)を強く宣伝してくると予想している。企業、教育の世界でBYODのトレンドが高まっていることの象徴である。

コマーシャルフラットパネルディスプレイ

コマーシャルディスプレイの世界は、ベンダーが新興テクノロジーの統合を目指し、多様なバーチカルの要求に応えるために製品ポートフォリオを拡大していくにつれて近年劇的に変化している。相互作用性はその一例で、プレゼン環境に対する需要の増加の恩恵を受けているが、一番大きな変化はシステム・オン・チップ(SoC)テクノロジーの統合からもたらされている。この統合の背景にある当初の促進要因は、単純明快さが重要な場所でのベーシックなサイネージアプリケーションをターゲットとしている業界からであった。今でもそうではあるが、大規模プロジェクトでのユースケースを備えた完全統合SoCのラインアップに向けて移行しているベンダーもある。

有機発光ダイオード(OLED)ディスプレイテクノロジーは、テレビのベンダーが熱心に大型スクリーンをローンチし始めるなか1月のCESでかなりの注目を集めた。多くのB2Bアプリケーションにとっては現在のコストプレミアムはまだ禁止的に高いが、FuturesourceではISEのショーフロアではいくつかのモデルが出されるとみており、CESでの「オフ・フロア」でのデモの模様からすると今回もかなりの関心が寄せられるだろう。ハイ・ダイナミック・レンジ(HDR)は、CES 2016での展示を強く意思表示しているテレビ業界の間でやはり話題となるだろう。1000ニット超の明るさはHDRスクリーンでは最低の仕様と考えられているが、この製品の開発により、屋外に近い環境や辺り一帯が明るいところで使えるよう設計されたコマーシャルソリューションに向けて費用や製品の利用可能性に影響を与えるとみられる。

今年の展示では、テレビ業界で超大型ディスプレイに対する需要が限られていることからすると4Kは引き続き重要なメッセージとなろう。ディスプレイのベンダーにとってB2B分野での事業機会は信じられないほど興味をそそるものになっている。2014年には主要プレーヤーの多くから84インチが紹介されたところ、2015年は98インチ製品が拡大した。2016年は70~75インチ製品で同じようなトレンドが予想されており、展示では多くの製品がローンチされるだろう。大型4Kディスプレイで興味深いアプリケーションは、プレゼンテーション分野だといえる。ユーザーが既存のプロジェクションテクノロジーを買い替えようとしている中、4Kの将来確実なメリットと単一スクリーンで複数の1080pのコンテンツフィードをサポートできる製品機能ゆえに需要が増加している。

サイネージをベースとする環境では、4Kに関してはソリューション間の価格が裁定されていくにつれて、一部の地域ではスモールマトリクス・ティルドビデオウォールを代替する用途として80インチ超の製品にも一定の役割がある。これはティルドテクノロジーの需要が下降線にあると言っているのではない。LEDとLCDの製品が展示で大きな注目を集めていることもあり状況は正反対だ。ナローピクセルピッチLED(NPP LED)の変種でみられる相当の価格低下、エクストリームナローベゼル(ENB)LCDソリューションの導入といった熱を帯びた進展にみられるように、大型スクリーンのソリューションでは様々なアプリケーションが生まれている。

ワイヤレスプレゼンテーション/ユニファイドコミュニケーション&コラボレーション(UC&C)

ここ数年、コラボレーションを伴うミーティングや教育ソリューションはISEの中心的な話題となっている。ここでは双方向ディスプレイやビデオカンファレンスの認知度が高まり、関連テクノロジーの費用が低下を続けているという背景事情がある。共同作業を行うスペースの中心的地位を占めるのがモバイル端末の普及拡大であるが、ミーティングルームでのコンテンツのソースとして、また、そこからユニファイドコミュニケーションツールにアクセスするための手段としてタブレットやスマートフォン製品への依存度がますます高まっている。この動きに対応して、オーディオ・ビジュアルを専門とする多様なベンダーはワイヤレスのプレゼンテーションシステムをローンチしている。ここでは複数のデバイスがミーティングや教室でのディスプレイに接続され、コンテンツの共有が可能となっている。画面の共有に加えて、こうしたデバイスはコンテンツのアノテーションを統合してキャプチャーしているほか、ウェブ会議でみられるようなコラボレーションツールと類似の体験ができる。このソリューション(スタンドアロンデバイスの場合もある)を補完しているのは増加を続けているソフトウェアのソリューションである。これは融合されたプロジェクション、ティルドキューブ、画面タッチでグループ作業環境を作ることのできる大型フォーマットディスプレイを使うことの多い、いわゆるコラボレーション・ウォールを実現している。

バーチャルリアリティー

Futuresourceでは、垂直市場で動くB2Bアプリケーションにあるバーチャルリアリティー、ミックストリアリティー、オーグメンティッドリアリティー(仮想現実)には3つのコアとなる利用モデルがあるとみている。それはデザイン、トレーニング、そしてマーケティング・セールスだ。もちろんセグメントに特有の事例があるが、古典的なものはヘルスケア業界における患者ケアとリハビリテーションである。「デジタル資産を拡張」する前提はB2B市場の共通テーマとなっている。これは特にデザインとマーケティング・セールスのユースケースに当てはまる。今週のISE 2016では現地で素晴らしい驚きの発見があることだろう。Futuresource Consultingでは来週、#ISE 2016展示会のレポート全文をシェアできるのを心待ちにしている。