近頃公開されたFuturesource Consultingのレポート「2015年第4四半期市場調査: K-12教育におけるパーソナル・コンピューティング」によると、K-12 (幼稚園から高校) 教育部門へのパーソナル・コンピュータの導入は2015年通年で増加を続け、デバイスの出荷数も全世界で12%上昇した。2014年には2,640万台だった世界での出荷数は、2015年には2,960万台に達した。
Microsoft Windowsは世界で最も売れたオペレーティング・システム (OS) の座を守り、2位以下の競合他社の倍以上を出荷した
Microsoft Windowsは、デバイス出荷時にインストールされているOSで世界のトップを走っており、市場シェアは、2014年の47%から2015年には55%に上昇した。大規模な国家的プロジェクトでの採用がいくつか決まっており、他でも競合プラットフォームを置き換えている。このシナリオではAndroidはずっと最大の敗者だ。メキシコでは2015年の国家プロジェクトでAndroidに替わって96万台のWindowsデバイスが導入された。タイでは2014年の「ワン・タブレット・パー・チャイルド (子どもひとりに1台のタブレットを)」プログラムが廃止され、2015年から「ティーチャー・ノートブック (先生にノートパソコンを)」プログラムが始まった。利用するのはWindowsのノートパソコンだ。
米国K-12教育市場は2015年も世界最大規模を保っており、通年で前年比17%増の1,050万台のデバイスが売れた。Chromebookは年間を通じて大きくシェアを伸ばし続け、2014年通年でデバイス出荷台数に占める割合が38%だったものが、2015年には50%以上に増加した。最終四半期 (10月〜12月) までには、Chromebookがデバイス出荷台数に占める割合が56%になった。学区でオンライン評価を実施する必要性から、Chromebookを後押しする動きはさらに加速し続けた。Chromebook側も費用効果の高い実施方法を用意し、教室の中でも外でも効率良くデバイスを管理する方法も提供した。オンライン評価をおこなう学区のほとんどがすでに購入を済ませたため、2016年の米国での市場の成長は鈍化すると予想されている。
米国市場以外でのChromebookの販売は低調なままで、2015年は市場シェア3%未満だった。2015年は一部地域でChromebookの成長が見られ、英国、スウェーデン、オランダ、台湾、オーストラリアなどの市場ではいくらか勢いがあった。Chromebookのオフライン性能は改善されつつあるものの、新興市場ではネット接続が寸断されており、多くの場合プラットフォームに必要なユーザー体験を提供するのに十分ではない。
しかし、米国市場では、WindowsプラットフォームはChromebookからの強い風当たりを受け続けた。年間のChromebookのシェアがデバイス総出荷台数の50%に向かう中で、Windowsはシェアを失うことになった。これに対してMicrosoftは自社のエコシステムに大幅な変更を加えた。Lightspeed Systemsと提携し、Chromebookを躍進させた原動力のひとつである改良された管理機能の提供を受けた。一方で、Chromebookと同じ価格帯で直接戦えるさまざまな低価格デバイスを、OEM提携先と協力して市場に投入した。HP Stream Pro G2、Acer TravelMate B117、Lenovo N22などだ。
Appleは2015年の世界的な市場シェアに関しては前年の5%から大幅に勢いを失った。米国市場単独では8%のシェアを失っている。Microsoftと同様に、Appleも教育部門のエコシステムにいくつかの大きな改善をおこなって2016年を開始する態勢を整えている。デバイス管理は学校にとって主要な関心事となっており、AppleはiOS9.3のアップデートで大幅な改善をおこなっている。このアップデートでは、iPadを複数の生徒で共有することが可能なマルチユーザー機能やクラスルームアプリを使った授業中のデバイス制御、まとめて作成して学区で管理することができる管理Apple IDが実現する予定だ。これらの改善に加えて、Appleはサンフランシスコを拠点とする教育分析スタートアップ企業、LearnSproutの買収も発表した。LearnSproutのプラットフォームは、生徒情報システム (SIS) からリアルタイム情報を収集し、生徒のパフォーマンスに関するさまざまな統計を閲覧できるダッシュボードを作成する。この買収によって、Appleは自社製品を改善することが可能となり、生徒情報の分析がますます重要な業界のトレンドになるだろう。
Futuresource Consultingで教育テクノロジー向け市場アナリストを務めるPhil Maddocks氏は次のように考えている。「米国市場でのChromebookの躍進は前例のないことで、市場の条件が完璧に揃った結果です。その条件の下で、Chromebookのプラットフォームは2015年デバイス販売数の50%超を占めるに至ったのです。しかし、世界市場を見ると状況はまったく違い、Microsoftが優勢です。MicrosoftとAppleは、それぞれ自社のエコシステムに大幅な改善を加えることで、米国でのGoogleの躍進に対抗しています。さらにMicrosoftは、300ドルのサブノートパソコンのカテゴリーでGoogleと直接対決するために、新しい低価格デバイスを市場投入しています。」
付記事項*Data included as part of report – K-12 market only, institutional sales not including bring your own. Mobile devices only, (Notebook/Mac, Netbook, Tablet, Chromebook) not including Desktop.