フューチャーソース・コンサルティング 最新市場 分析レポート

Vol. 119

困難に直面している家電市場においてウェアラブルテクノロジーは主要な成長分野

2016年08月31日

世界の家電市場を長期展望したFuturesource Consultingの最新レビューでは、取引金額が1.3%減少して6,760億ドルになった昨年の後、この業界が直面している課題と機会について報告している。

「スマホブームが下火、コンバージェンスが打撃となっているほか、競争により成熟市場の価格が圧縮されている状況下で、CE(消費者家電)市場の成長は全体として低調になりました」と、Futuresource Consultingで消費者家電を担当しているSimon Bryantアソシエイトディレクターは述べている。「ただ、明るい話題に好調なウェアラブルセクターがあります。今年の取引金額は50%増、2020年までは年平均22%の成長が見込まれています。」

25年以上にわたってCEおよび関連するエンターテイメントセクターを調査対象としているこのレポートでは、市場を8つの主要カテゴリーに分類し、それぞれについて2020年までの取引数量と金額の予測を公表している。対象市場はウェアラブル、家庭用AV、テレビ、モバイル、インフォテインメント、カメラ・キャムコーダー、自動車、ゲームである。

Futuresourceでは自動車のインフォテインメントにおける成長機会についても強調しており、この市場では世界経済の動向次第だが約5%の成長が続くほか、世界の自動車生産や車に搭載されるテクノロジーの価値の増加と連動するとしている。

「他の成長分野としてはワイヤレスのスピーカーやヘッドフォンがあり、製品イノベーションのほか、モバイル音楽やストリーミングサービスの広がりがこれを後押しします」と、今回のレポートを共同執筆しFuturesourceで家電部門のシニアマーケットアナリストも務めるJack Wetherill氏は述べている。

世界におけるCEの取引金額は2020年まで年平均1.2%の増加が見込まれているが、この予想も世界経済の動向次第である。同調査によると、近年まで成長を牽引してきた新興国市場が2015年に減速した。さらに英国のEU離脱(ブリグジット)が経済成長やCEの需要にマイナスの影響を与えるかもしれない。

Futuresource Consultingでは、CE市場の減速につれて成長をめぐる争いが市場シェア、ひいては価格競争に移るとみている。AppleとHuaweiは2015年度に堅調な成長を見せたが、Appleは 2016年に減速した。低成長の市場環境のなかで、他のCEブランド大手も高い成長と収益性を追求し、もがき続けている。

Wetherill氏は続けて、「引き続き、市場からの退出や合併・買収の動きがみられるでしょう。2016年にはMicrosoftが携帯電話事業から退出したほか、中国のHisenseがSharp Americaを買収しました。これは、最も安全なのはドミナント戦略であることを物語っています。他方、ウェアラブルのような成長セグメントを支配するのは社内で、そして買収を通してイノベーションを継続できる既存ブランドでしょう。ウェアラブルのFossilと Fitbitの案件、NokiaとWithingsの案件などが好例です」と述べている。

Futuresourceでは引き続き参入障壁が低下すると予想しており、これにより間接費の少ない新規参入者がシステム・オン・チップ(SoC)テクノロジーや中国の契約メーカーを活用して市場シェアを獲得できるようになるという。自動車やオーディオセクターで一定のポジションを維持しているHarmanのような専業CE事業者についてのレポートを含め、いくつかの成功物語が紹介されている。ただし、モバイルのコンバージェンスや競争の進展により、マルチルームオーディオのSonosやアクションカメラのGoProなど、成長のパイオニア的企業にとっては厳しい情勢となっている。

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