Futuresourceによればここ数年力強い2桁成長を続けていた米国K-12教育分野向けモバイルPC市場は、普及率が比較的高い水準に達しつつあり、市場成熟の兆候を見せている。第3四半期の市場規模は、対前年比でわずか3.5%の伸びであった。2017年通年では、計9%の成長が見込まれているが、2016年の実績から19%の下落となる。2017年末までに、生徒/教師人口に対する普及率は50%超 (世界の主要市場で最高) に達し、切り替え需要に対するの割合が高まっている。
OSの戦いー切り替えサイクルで勢力図は変わるか?
iOS、Chrome OS、Windows間の激しい競争は続いている。米国教育市場におけるChromebookの成長は、AppleとMicrosoftにとって大きな頭痛の種となっている。オンライン評価への移行がPC採用の主要因であった当時、Googleは入門レベル、管理ソフトウェア、コラボレーションツールに関して、分かりやすく市場ニーズを上手く捉えた提案を行い、デジタル教室の生産性ニーズを満たす魅力的で低コストのソリューションを作り上げた。その後、Chrome OSは市場を席巻し、2016年に出荷された端末の50%超へと達した。競合他社を悩ますように、教育市場はGoogleに対して、より大規模で収益性の高い商業・小売市場への成長のための踏み台を提供している。
Chrome OS採用の増加に対して、ここ数年MicrosoftとAppleの両社は、教育市場を重視した大がかりな投資を行ってきた。Microsoftは、コラボレーション用のMicrosoft Teams、端末管理用のInTune、Windows 10Sおよび多数の新ライセンス・パッケージの発表といった、同社のソリューション・エコシステムを開発した。さらに、教育市場に特化した300ドル以下のWindowsベース端末を市場に投入し、市場に影響を及ぼしている。一方でAppleは、Classroomアプリ、Swift Playgroundsコーディング・ソリューションを導入すると同時に、iPad共有機能や端末管理ソリューションの改善など、教育市場に焦点を当てた大がかりな機能性のアップデートを実施した。
Googleが依然として市場リーダーとしての優位を保つ一方、その成長は鈍化の兆候を見せている。Appleは第2四半期に新しい (より安価な) iPadを発表し、これはとても好調な売れ行きで、即時的なインパクトを市場にもたらした。第3四半期はChromebookにとって、販売量で対前年比わずか3%増とこれまでで最も緩やかな成長となり、同期間のWindows端末のシェア拡大によって、再びMicrosoftが息を吹き返す兆候がある。
2014/15年に配置されたChromebookの大半は、2018年に切り替えが予定されていることが予想される。MicrosoftとAppleが、Googleの製品ラインナップに対抗する魅力的な代替製品を開発する中で、 両社はChrome OSユーザーを自社の環境に転換させることができるであろうか? この質問に答えるために、市場は学区の更新投資におけるOSに関する決定を慎重に見守っている。ここでのトレンドが、今後の競争の激しい勢力関係を巡る議論の行方を占うこととなるであろう。
Futuresource Consultingでアソシエイト・ディレクターを務めるMike Fisher氏は次のように語る。「Microsoftは、端末およびプラットフォーム双方での大きな発表など、ここ1年の教育エコシステム製品ラインナップ開発において、大きな進展を見せました。2017年第3四半期は、多くのOEMや主要チャネルのプレイヤーがChromeベース端末よりもWindowsの優勢な伸び (および伸びの見込み) を報告し、米国内における競合シナリオのわずかな変化を初めて見て、聞くこととなりました。Microsoftにとっての目下の課題は、このトレンドを2018年に加速させる方法でしょう。市場における需要の大半は、切り替え需要であることが予測され、既存のChromeユーザーを納得させて、完全に今あるエコシステムを変えることは、時間とコストの絡みでそう簡単ではないはずです。」