次世代の運転技術がしっかりと根を張り、自動車とエンターテインメント業界の統合が進む現在、Futuresource Consultingは総合的な最新の自動車市場レポートでトレンドと最新動向についてまとめている。
「自動車がエンターテインメントとコミュニケーションの次なる戦場となるのは間違いありません」と、Futuresource Consultingアソシエイト・ディレクターのMike Fisher氏は述べている。「自律走行運転技術がコモディティ化しつつあるところに家電業界が割り込んできました。家電業界は、走行時のエンターテインメント導入と生産性向上による自動車メーカー製品の差別化に際して重要な役割を果たしています。自動車に対する需要が世界的な規模に広がるにつれて、家電業界にいる多くのプレーヤーにとって、自動車市場は大きな収入源になることが証明されたのです」
台頭する自動車市場
世界の乗用車市場規模は2018年に8500万台になり、2025年には1億台を超えると予想されている。この成長の大半を牽引するのは新興国である。例えば、インドの市場は2017年から2025年にかけて倍増するとみられている。英国、米国や西欧諸国の市場は飽和状態にあるが、ハイテクな自律走行運転や自動車エンターテインメントシステムの面ではかなりの成長機会がある。
テクノロジの巨人が支配する
「Apple、Google、AmazonなどAIの専門知識を持つテックの巨人には、自動車のエコシステムに深く入り込める機会がありますが、それにより消費者はデジタルな生活を車内に持ち込めるようになります」(Fisher氏)。「パーソナルなバーチャルアシスタントのほか、AIや顔認証を活用したパーソナライゼーションなど、広い範囲の新サービスが導入されつつあります。ガソリン代や駐車料金の支払い、高速道路通行料の決済、自動車への荷物配達などが日常的に行われるようになり、小売やeコマースのサービスではよりターゲット化が進むでしょう」
完全自律走行車の登場により、家電にとっての機会はさらに広がる。高度な、しかし完全ではない自律走行が可能となるレベル4のADAS(先進運転支援システム)車が初めてお目見えするのは2020年までとみられている。それにより運転手は通常、車内で別のタスクに取りかかることができる。
「私たちはまだその段階には至っていませんが、よりパーソナライズ化されたサービスの実現に向けAIが対応を進めています。それにはメルセデス、現代自動車、トヨタ自動車により展示されたインテリジェントで感情もあるコンセプトのほか、BMWなどが提唱している3Dによるホログラフィックなバーチャルアシスタントなどがあります」(Fisher氏)
セキュリティ、パーソナライゼーションそしてプライバシー
シェアされたモビリティサービスの実現に向け自動車メーカーが新たなトレンドを探っている中、自動車のセキュリティやパーソナライゼーションで別の要件が表面化してくるだろう。不便を強いることなく、また保有をすることなく自動車にアクセスできる新たな手段は、都会に住む若者からみれば大きな魅力に映る。MaaS(モビリティ・アズ・ア・サービス)には、車のセキュリティやパーソナライゼーションに新たなアプローチが求められそうだ。例えば事前に設定された個人の嗜好に合わせた顔認証、音声認識によるサインインのほか、各利用者により特定されたトリムレベルに応じて一部の機能を有効・無効にすることなどがある。
「エンターテインメントやコミュニケーション以外にも、数十億ドルの市場としてコネクテッドカーのデータを目にすることにもなるでしょう」とFisher氏は言う。「リアルタイムのマップから自動車の修理診断、走行実績に応じた保険商品などあらゆるサービスが、ネットワーク間のデータフローによって実現可能となるでしょう。しかしながら、それらは全て記録された個人データに依存しており、プライバシー法制度が問題となります。これは慎重に交渉することが求められる危険な地雷にもなり得ます。重い罰金が科される可能性だけでなく、いかなるセキュリティ上の漏洩があった場合も、消費者からみた不信の種を蒔くことになるでしょう。