Futuresource Consultingによる最新の業界レポートによると、セットトップボックス(STB)とメディアストリーマーから成るメディアボックスの世界市場は2019年に1%の出荷台数成長を達成すると予測されている。
「市場はしばらく停滞を続けていましたが、出荷台数は再び上昇しています」とFuturesource ConsultingのシニアマーケットアナリストであるMatthew Rubin氏は言う。 「メディアボックスは今年3億5000万台を超える見込みで、その主な原動力となるのはメディアストリーマーですが、無料放送のSTBセグメントにも多少ながら助けられています。ただ全体的な出荷の伸びにもかかわらず、貿易額は3%減少すると予想されます。会計年度末が市場を占めるようになるためです。製造部品表(M-BOM)も減少しており市場構造を安定させていますから、ベンダーにはまだ十分に利益率を上げる余裕が残されています。」
STB市場の粘り強さ
STB市場は世界的には比較的横ばいの状態にある。コード・カッティングの結果としてペイテレビSTBセグメントの出荷台数が減少しているが、これが無料放送STB出荷台数の増加によりほぼ相殺されているからだ。ただこの市場の横ばい状態が、地域ごとのトレンドの分化を見えなくしてしまっている。北米では減少しているが、それが南米およびアジアの大部分における成長によって相殺されているのだ。業界は大きな逆風に直面しているが、Futuresourceでは2019年から2023年までにSTB出荷CAGR(年平均成長率)において世界的に1%の成長が見られると予測している。
「衛星放送によるペイテレビ STBの台数は予測期間中は横ばいで、デジタルケーブルボックスではCAGRが2%減少する見込みですが、IPTVは出荷台数が2019年の5,600万台から2023年には6,700万台にまで増加すると予測しています」 とRubin氏。「これは5%というCAGRに当たります。インターネットのインフラ改善によるものです。」
「ビデオコーデックが変更される兆しが見られることから、STBの見通しは予測期間に終わりが近づいても好調のままだと思います」とFuturesource Consultingの主任テクノロジーアナリストであるSimon Forrest氏が付言している。 「先進国市場でUHDが急速に普及していることから、業界ではビデオ圧縮をさらに効率的に実現できるような代替コーデックを再び求めるようになってきています。これはSTBベンダにとっては前向きなニュースです。 放送局やSVoDプロバイダが改良型の圧縮方式を利用するようになれば、交換サイクルが出来上がってくるからです。当社では、この移行は2022年初旬に始まると予測しています。ハードウェアベースのシステムオンチップ(SoC)の実装においてVVC(H.266)やAV1がより広く利用可能になるからです。」
上昇傾向のメディアストリーマー
これとは逆にメディアストリーマーは上昇傾向にあり、Futuresourceでは今年8%の成長と5,700万台の達成を予測している。北米ではメディアストリーマーを早期に導入していることから、この2019年の出荷台数の3台に1台を北米が占めることになるだろう。
「ネットフリックスやAmazonプライム・ビデオといったSVoDサービスに対し購買意欲が高まっていますから、メディアストリーマーに対する需要も引き続き高くなっています。社会の関心にも衰退の兆しは見られません」とRubin氏。「ハードウェアは、アマゾン、グーグル、Roku(ロク)、アップルといった企業に占められています。これらの企業すべてが好調な成長を享受しています。主流のペイテレビ事業者で既存のメディアストリーミング機器に全面的にコミットする会社は多くないでしょう。事業に導入するには安上がりであるものの、ユーザーインターフェースを制御しきれなくなり、自社のコンテンツの庭に消費者を留めておく能力も失いつつあるからです。ブランドの衰退とともに、ユーザーエクスペリエンスが希薄したり損なわれてしまう可能性もあるのです。大手企業の多くが、これにより自社の評判を危険にさらしたくない、と考えるでしょう。」