―ストリーミングサブスクリプションは、世界音楽市場の成長のけん引役ナンバー1であり続けており、昨年の音楽消費の70%以上を占めていた。しかし、新型コロナ感染症の拡大を止めるための措置が消費者の生活を変化させる中、音楽ストリーミングは消費の一時的な落ち込みを経験している。
Futuresource Consultingの市場アナリストAlexandre Jornodは、「私たちはストリーミング音楽配信サービスの上昇を予測していたかもしれません。しかし、それは当たっておらず、早期の指標は逆を示しています。ロックダウン下の国におけるストリーミング消費は、15%から20%下落しているようです。これは、消費者が新しい隔離規則に合わせたことで、毎日の通勤やオフィス、ジムでの時間といった音楽を聴く主要な状況がなくなったことに関連してます」と語る。
シェアする暇つぶしとしての音楽
家族が家で一緒に時間を過ごしている中、音楽消費はよりシェアされる活動となっている。感染拡大以前は一日中別々のアカウントを使って異なる音楽を再生していた人々が、今はスマートスピーカーを使うことが多くなり、一つのアカウントを使い世帯内で音楽を再生している場合が増えているようだ。同様に、リスナーが人間によるキュレーションや生放送のニュース、親しみやすい口調や関係を求めている中、ラジオの消費が増えている。また、映画やテレビ番組のストリーミングに加え、ゲームとの厳しい競争も発生している。これらの活動はより高い水準の注意力を必要としており、習慣が中断された結果として余暇時間が増えた時にはより好まれる傾向がある。
新しい習慣、新しい機会
「消費者が状況に慣れて新しい習慣を確立すれば、特にH2におけるプレミアムサブスクリプション登録者が新たに増えて、H1における停滞をほぼ帳消しにすることで、ストリーミング音楽配信は危機前の水準に戻ると予想しています」とJornodは語る。「特定の歌やアーティストを検索するのではなく、寛いだムードのプレイリストを消費者は探すので、家で聴くのが圧倒的になって音楽の種類やジャンルは変わるでしょう」
スポティファイとアップルは高く飛翔
スポティファイとアップルは、昨年二社だけで世界消費の60%以上を占めて業界をリードし続けたが、この傾向は続くだろう。アップルが米国での首位を奪取しよたが、スポティファイは世界ナンバー1の地位を維持しだ。アマゾンミュージックは、複数のストリーミングプランにより多くの視聴者のニーズに応えることで力強い成長を見せたが、ただし米国と英国に極端に偏っているエコーのスマートスピーカーの地理的普及率にサブスクリプションは密接に関連している。ユーチューブミュージックは、市場参入が遅かったためにサブスクライバー数の面で競争に出遅れているにもかかわらず、既存のユーチューブ視聴者のおかげでキープレーヤーとなる潜在力を秘めている。一方、ディーザー、タイダル、ナップスターのような小さな事業者は、地域市場に照準を合わせる、ニッチ視聴者やB2B事業のニーズに合わせるといった戦略に集中している。
「ストリーミング音楽配信サブスクリプションは、物理的媒体が歴史的に強力でありストリーミングに移行しているような市場からも利益を得ています」とJornodは言う。ドイツ、日本、フランスといった国で採用が加速している一方、北米や欧州といった成熟市場では差別化要素として付加価値のある機能に注目が集まっています。影響力を行使し始めているポッドキャストや、同様にハイレゾ音源、ドルビーアトモスミュージック、ソニー360リアリティーオーディオといった強化された視聴経験には注意しておきましょう」