Futuresource Consultingの最新レポートによると、ビデオ会議ソリューションは商業最前線に向け引き続き躍進中で、2019年度のビデオ会議ハードウェア市場は数量、金額ともにコロナ禍以前の成長率を達成、前年比でそれぞれ28%、9%増となった。同レポートはデスクリサーチ、主要地域7地域のベンダーから収集した販売データ、および米国、フランス、ドイツ、英国でFuturesourceが実施したチャネルインタビューを組み合わせたもので、ビデオ会議ハードウェアのあらゆる側面をカバーしている。
新型コロナによりビデオ会議やコラボレーションツールによるコミュニケーション手段の全体最適化が加速し、このセクターで事業を行うベンダーに新たなビジネスチャンスがもたらされたのは明白だ。だがFuturesourceでは、このチャンスは一時的なものに留まらず、はるかに長期的かつ大規模なチャンスになると予想している。従業員たちが新型コロナによって初めて使い始めたコラボレーションツールに慣れ、雇用主もそのメリットを実感し始めたことから、コロナ以降の世界は引き続きリモートコミュニケーションや高度に分散した労働力に依存することになると考えられる。
ビデオ会議ソリューションに含まれる製品セグメントは、ソフトウェアとハードウェア両方にまたがり、その範囲も幅広い。具体的には、ピュアクラウドソリューション、ソフトウェアに依存しない周辺機器(SWAP)、ルームハブ、チームコラボレーションディスプレイ、ハードウェアコーデック、テレプレゼンスなどが含まれる。
ピュアクラウドソリューションは、エンドユーザーを特定の場所やエンドポイントに結び付けることなくビデオ会議を可能にするもので、ブラウザ内でもモバイルアプリしても使用できる。「SWAP=ソフトウェアに依存しない周辺機器」とは、クラウド型会議用ソフトウェアと併用されるハードウェアデバイスのことであり、これによりエンドポイントごとに複数の参加者の選択が可能になり、ビデオ会議の一層の高品質化が実現する。ルームハブとはタッチパネルのことで、通常は会議室のテーブルにあり、これを使ってユーザーは会議機能とその他の会議室機能の両方を制御できる。チームコラボレーションディスプレイは、室内およびリモートコラボレーションを容易にするために設計されたインタラクティブディスプレイであり、通常は音声・ビデオ会議機能が内蔵されている。ハードウェアコーデックは、ハードウェアベースの従来型ビデオ会議システムと、ハードウェアとソフトウェアが緊密に一体化し単一ベンダによって制御されるクローズドソリューションの両方で構成される。テレプレゼンスは、最高品質の音声・ビデオコミュニケーションを提供するもので、コストも高くなる。主にセキュリティ上の懸念からクラウド会議が使えない重役会議室や政府施設の領域に留まるセグメントと考えられる。
ルームハブ好調、大手3メーカーが独占
「ルームハブは現在すでに市場での成長基盤をしっかりと確立させ、数量、金額ともにセクター内での最大の成長率達成に向かって好調な動きを見せています」とFuturesource ConsultingのシニアアナリストであるAdam Coxは言う。「当社では、世界市場での成長が2019年度の4億4,800万ドルから2024年度には28億ドルにも及ぶことになるだろうと予測しています。簡単に使えますし、これを使えば企業はいつでもどんな部屋でもビデオ会議がすぐに始められるからです。ルームハブ市場をリードするのは米国で、EMEAがこれに続きます。これに比べ、ほとんど目立った動きが見られないのがAPAC地域です。消費者が価格に敏感で、投資にも消極的だからだと考えられます。今後、ルームハブ市場が成長する上で最大の課題となるのが、会議室ソリューションのロックイン性だと思います。特に今どきのユーザーは、柔軟性を求めがちだからです」
「クラウドベンダーの多くが会議室ソリューションを提供していますが、Microsoft Teams Rooms、Zoom Rooms、Google(ハングアウト)Meetによる市場の寡占化が加速しています。これらのクラウドプロバイダーは、主要なハードウェアベンダーとパートナーシップを築き上げました。競合ひしめく市場においては、こうしたお墨付きは大変有利となりますし、その影響はハードウェアからソフトウェアにも及んでいきます。ロジクールのSWAP(ソフトウェアに依存しない周辺機器)を使用している企業が会議室ソリューションを導入しようと決めた場合、Microsoft Teams、Zoom、Googleという3つのオプションで提供されているロジクールTapをインストールする可能性が高くなります。同様に、クレストロンの方を好む企業は、Microsoft TeamsやZoomに行き着くことになるでしょう」
「SWAPがビデオ会議市場を席巻する流れが急激に加速化し、今では数量において市場最大の部分を占めるようになりました。SWAPは最近までは主に小規模の会議室やハドルスペースのオプションとしてしか見られていませんでした。ですが、特にPro-AVといったベンダーの市場新規参入により、こうした認識が変わりました。ハドルスペースから重役会議室まで、あらゆるサイズのミーティングエリアでSWAPが使用できるようになったのです。このカテゴリーを牽引しているのが小中規模の会議室であることに変わりはありませんが。競争はますます激化しており、利鞘が薄い場合も少なくありません。特にハドルスペースにこの傾向が強く見られます。これがロジテックといった大規模に供給できるベンダーに有利に左右します」
北米・南米で急成長
北米と南米では、2019年度も引き続き急成長が見られた。これらの地域では小規模会議室・ハドルスペースへのテクノロジー導入が世界一進んでいることから、特に企業分野の成長が著しい。ただし、こうした小規模スペースにインストールするソリューションタイプとしては最も安価なタイプが好まれることから、ハードウェアカテゴリー内の1,000ドル未満のサブカテゴリーが市場を牽引することになった。教育分野に目を向けると、コラボレーションディスプレイの普及を加速させる上で中心的な役割を果たしているのが教育分野である状況は依然として変わらない。
国内ブランドが圧倒的な強さを見せる中国
セクター成長の鍵となる中国では、国内ブランドが支配的であり、輸出規模拡大の機会を狙っているところである。APACと中国を合わせた企業分野での昨年の成長率は前年比で53%アップした。これは主に中国での成長が著しかったことによる。中国を除くAPAC地域では、教育分野で急速な成長が見られた。 ただこの地域は依然として価格に大変敏感であり、小規模会議室やハドルスペースにおけるコラボレーションテクノロジーの導入に関していえば、世界のどの地域よりも遅れが見られる。
拡大の機熟すEMEA
EMEAは、WPS(ワイヤレスプレゼンテーションソリューション)において昨年最も成長が鈍い地域だった。だが会議室小規模化の傾向は依然として続いており、EMEA、特に西ヨーロッパで、こうした小規模会議スペース向けコラボレーションテクノロジーに投資する企業が増えている。企業分野ではWPSコラボレーションディスプレイの十分な活用がまだ見られないものの、この製品セグメントは勢いを増しており、なくてはならない機能になるのも時間の問題であることから、拡大の機は熟したといえる。
ビデオ会議用周辺技術に対する投資:エンドユーザー調査
「今年初めに1,000人以上のエンドユーザーを対象にエンドユーザー調査を行ったのですが、その回答者の3分の2以上が、昨年に比べてビデオ会議への依存度が高まったと答えられています」とCoxは言う。「さらに、ビデオ会議の質を高めるテクノロジーに投資する企業も増えており、全回答者の40%以上が、プラグインの固定カメラ、プラグインパワー方式のマイク、ヘッドセットなどの購入に言及されています。ビデオ会議の動きが社会的距離(ソーシャルディスタンス)措置の台頭により加速されたのは確かですが、変革はすでに始まっていたのです。将来的な機器への支出に関しては、多くの企業が短期的に出費を据え置いていますが、これはすぐに回復すると予想しています」
ビデオ会議ソリューションの未来
「短期的には、新型コロナの影響により、ある程度市場にブレーキがかかりました」とCoxはコメントする。「今年の出荷台数が企業と教育の両分野で2018年度よりも増加することに変わりはありませんが。教育プロジェクトの中には2020年を通じて継続しているものもありますが、政府支出は中長期的には大幅に削減されると考えられます。短期的な企業支出の据え置きはあるかもしれませんが、需要は急速に回復し、成長は今後も続くと思います。画面共有の必要性は高まるばかりだからです」