フューチャーソース・コンサルティング 最新市場 分析レポート

Vol. 213

アップルとグーグルがテレビ販売を牽引するカギとなる理由

2020年12月23日

2020年12月11日―2020年は、世界のテレビ市場をひっくり返した。今月初め、Futuresource ConsultingのTristan Vealeは、変化するテレビとメディアの状況についてSMPTEでプレゼンテーションを行った。プレゼンテーションの最初に、アナリストのJuan Villegas Leybaが執筆したFuturesourceの最新テレビ市場レポートから引用したデータと専門知識に基づき、テレビ関連の家電と付属品の展望に焦点を当てた。ここでは、彼の発言の一部をご紹介する。

全体的に、世界のテレビ販売は安定的に推移しており、予測対象期間中もその状態が続くと考えられる。当社資料によれば、2018年から2024年の間、CAGRは1%未満の成長率となる。ただこの数値は、家庭での余暇時間が増えている消費者が、家庭内における視聴体験を向上させたいと考えたため、先進国では今年に入って売上が増加しているため、背後にある大きな混乱が見えなくなっている。以前は世界的な成長を牽引していた発展途上国において、経済の先行きが不透明な期間は家計が可処分所得の消費を控えたため、出荷台数が減少している。

4Kと底辺への競争

テレビが大型化に伴い、消費者は過去4年間で4Kセットへ乗り換えてきた。このおかげで、ベンダーはプレミアムを上乗せした価格で販売し、より多くのマージンを生んでいた。しかし、これは持続不可能なことが分かった。2018年、メーカーは市場シェア獲得のために激しく競争し、価格戦争が始まった。規模の経済と技術進歩によりパネル生産のコストは減少したものの、価格競争は厳しく利益を圧迫し、利益を生む潜在力を奪ったため、メーカーは競争上の優位性を得るために他の可能性を探すようになった。

スマートTVのジレンマ

当社の洞察では、インターネット経由のテレビ配信への消費者依存度が高まる中、2020年末までには世界で10億台以上のスマートTVが設置されると予測している。ベンダーにとっては、スマート機能を搭載したテレビの普及が新たなエンターテインメントの競争の場となっている。現在、LGのWebOS、SamsungのTizen、そしてAndroid TVが競い合っている分野だ。Android TVは低コストで高品質のインターフェースを持ち、ある程度のカスタマイズやパーソナライズが可能なため、多くのブランドが採用している。

とはいえ、スマートテレビの課題は、イノベーションとアップグレードのバランスだ。膨大な数の動画サービスが存在するが、全てアプリ開発を必要とする。また、これらを効果的かつ安全に動作させるためには、必要に応じてアップデートやアップグレードをせねばならない。これは、新しいテレビだけでなく、旧型モデルに対しても行う場合、特にメーカーにとってはコスト高になる可能性がある。旧型モデルのサポートを止めればコストは節約できるが、消費者の反発を招く可能性がある。さらに、旧型モデルのテレビで定期的なアップグレードを行うなら、所有者にとってアップグレードするインセンティブがほとんどなくなるので、メーカーの利益が減少してしまう。慎重な対処が求められる、難しい状況だ。

スマートTVのジレンマは、Google Chromecast、Amazon Firestick、Apple TVボックス等のメディアストリーマー市場でも起きている。これらは全て、消費者が複数のサブスクリプションサービスからコンテンツにアクセスする方法を簡素化することで、ユーザー体験を向上させるコンテンツ集約者として機能するものだ。これらのデバイスは安価で、動作は効果的で、常にアップデートされており、スマートTVに異なるサービスをもたらし、テレビの寿命を延ばすことができる。特にこうした理由を裏付けとして、メディアストリーマーのインストールベースが2024年までに世界規模で3億近くまで増加するとFuturesourceは予想している。

さらに、メディアストリーミングデバイスを販売する主要企業は、コンテンツサービスを集約し、メディアコンテンツへの支払いを受け付け、スマートホーム技術と効果的に統合できるエンターテインメントエコシステムへのアクセスも販売している。Google、Apple、Amazon等を含むこれらのプラットフォームは、現代の消費者のコミュニケーション方法、買い物の仕方、余暇の楽しみ方に大きな影響を与えている。つまり、テレビはもはや独自の道をたどるエンターテイメントデバイスではなく、少なくとも上記のようなオペレーティングシステムと連携できねばならない。消費者が選択したオペレーティングシステムとシームレスに接続できることは、あるブランドのテレビや付属品を他のブランドと比べて選択する重要な理由になりつつあり、これが競争の次なるフロンティアを形成している。

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