2020年12月11日―世界経済は、COVID-19により壊滅的な打撃を受けた。政府が感染爆発を抑え込もうとする一方で、産業界や社会は適応を迫られた。Futuresourceの第3回COVID-19最新情報では、各国政府が経済への影響に対応して行った施策の進捗状況を振り返る。これには、家電、エンターテインメント、プロAV市場の下半期の状況や、2021年上半期の見通しも含まれる。
有望なCOVID-19ワクチンの臨床試験結果のニュースを受け、産業界や市民は「そろそろ峠を超えたかもしれない」という希望を抱いている。しかし、社会経済的トレンドへの影響や混乱は、しばらくの間続くことになるだろう。Futuresourceは6月にCOVID-19がテクノロジー分野に与える影響について書いた際、市場の混乱は2020年後半まで続き、需要側と供給側の問題は2021年上半期まで完全には解決しないとの見通しを示した。2020年末までに、家電、エンターテインメント、プロAV小売市場1,200億ドルもの利益が消失すると予想していた。
2020年上半期に不確実性に直面した領域では、政府が介入して支援を行っている。政府の直接的支援のおかげで、世界では5000万人以上の雇用が維持されたと推定されている。各国の全国的ロックダウンの成功により、2020年上半期末までに各国政府は貿易や人の移動に関する制限を撤廃し、消費者や労働者はCOVID-19以前の生活パターンに戻るよう勧めるほどに、ウイルスの拡散は遅くなっていた。ところが、その後感染者数が再び増加していき、各国政府は短期的な全国的ロックダウンや地域に特化した施策を実施せざるを得なくなっている。
第2波の到来にもかかわらず、政府の支援とロックダウン緩和が相まって、経済的影響は緩和されている。上半期の予想では、パンデミックの影響で世界経済は7.6%縮小するとみられていた。その後、予想は若干改善され、現時点で世界経済は7.2%縮小するとみられている。しかし、これほどの支援はタダではない。世界的に見て、政府債務はGDPの平均76%に相当する水準に上っている。
政府の対策は、上半期にパンデミックの影響を最も受けた市場のテコ入れに十分だったのだろうか?今のところそうは思えない。興行収入やライブイベントなどの分野は依然として低迷したままだ。主要イベントの多くがキャンセルされたり、縮小されたりしているため、主要イベントに依存する有料テレビのARPUは全体的に低下している。その代わりに、消費者はオンデマンドサービスを利用してメディアコンテンツを購読しており、Futuresourceは、プレミアム・ビデオ・オン・デマンド(PVOD)への支出は2020年末までに5億ドルを超えると予測している。
消費者のチャネル嗜好が大きく変化しているのは、メディア消費だけではない。これまで消費者向けの企業に比べてデジタルチャネルの導入が遅れていた産業は、追いつく必要に迫られた。同時に、大規模な小売店を持つベンダーは、店舗が顧客エンゲージメント戦略を道路脇での受け取りやデジタルサイネージへと変化させる中、オンラインでの体験と既存チャネルをいかに融合させるかを考えねばならなかった。
2020年は、消費者に持続的変化をもたらしただけではなく、仕事とテクノロジーの関係にも変化をもたらした。企業の3分の2が従業員の在宅勤務を認めるようになり、在宅勤務への忌避は完全になくなったと言っても過言ではない。最近の発表では、SalesforceがSlack(仕事向けチャットおよびコラボレーションプラットフォーム)を277億ドルで買収しようとしていることが明らかになっており、ベンダーはコラボレーションおよびコミュニケーションツールと企業システムの統合に大きな投資をし始めている。残りのセクターにとっては、2020年は二分された一年だったと言える。上半期には需要がベンダーのデバイス供給能力をはるかに上回っていたが、下半期では徐々に需要が合理的なパターンに徐々に戻っていった。
2020年は、ベンダーにとっては特に厳しい年だったかもしれない。少なくとも世界貿易に関しては2021年上半期に正常な状態に戻る可能性が高いが、2020年のトレンドは来年にも加速するとみられている。消費者向けテクノロジーやメディアのベンダーは、オンラインチャネルへの投資不足だけでなく、デジタルチャネルによって可能になった商品調達や切り替えの低コスト化に、顧客体験プログラムを開発することで対応する必要があるだろう。企業にとっては、デジタルツールへの投資が、目下の優先事項となっている。企業は、チームがどこで仕事をしていても生産性を保てるようにして、予測不可能な変化に迅速に対応できるよう、テクノロジーを活用していかねばならない。