Futuresource Consulting社による新たなレポートでは、自動車のスマート化とコネクテッド化が、オーディオ業界に幅広い新たなユースケースとビジネスモデルをもたらしていることが報告されている。2019年と2020年の世界の自動車販売は大きな影響を受けたが、先進市場の需要が回復する中、新興国市場で自動車保有台数が大きく伸びるなど、長期的な市場成長が見込まれている。
Futuresource Consulting社のSenior Market AnalystであるAlexandre Jornod氏は次のように述べた。「コネクティビティのトレンドは、オーディオ技術の発展と相まって、先進的な車載エンターテインメント・ソリューションに大きなチャンスをもたらしています。常にコネクティビティを求める消費者の要望が、自動車メーカーの戦略を形成しています。市場がコネクティビティ、自動化、シェアリング、電動化といった自動車の未来へと移行するにつれ、自動車OEMはこれに適応していかなければなりません。これらの新たなトレンドは、よりサービス主導の体験への道を示しています。」
オーディオシステムの設計に影響を与える燃料効率
また、OEMは現在排出ガスや燃費の改善に対する要求と、魅力的なカーオーディオ体験を提供したいという要望のバランスを取ることが求められている。これは、高音質サウンドシステムを開発するには、スピーカーの数やパワーを増やす必要があり、その分、重量も増えてしまうからだ。
Jornod氏は、「ハードウェアを追加することなく、車内でのオーディオ体験を向上させるために、サウンド最適化のためのアルゴリズムやソフトウェアが使われることが増えています。これにより、重量をコントロールしながら、車内のサウンドを向上させることができます。これは近い将来、このソフトウェア主導のアプローチにより、ユーザーが簡単な無線アップデートによりサウンドシステムをアップグレードできるようになることを意味しています。」
3Dオーディオとサウンドゾーンの登場
イマーシブ オーディオも重要な分野となっており、3Dオーディオフォーマットに対応するシステムも増加している。「Dolby Atmos」や「Sony 360 Reality Audio」のような製品は、従来のステレオに対する制約を超えて、カーオーディオを飛躍的に進化させるオーディオ再生の分岐点となるものと考えられている。
Jornod氏は「高級自動車メーカーの中には、すでに主要モデルに3Dシステムを搭載し、車体の天井中央部にスピーカーを配置して、イマ―シブオーディオを実現しているところもあります」と語り、次のように加えた。「イマ―シブオーディオは、特に自動車の自動化運転への移行がより進むにつれて、自動車メーカーにとって重要な差別化要因になると予想されます。しかし現在の最大の課題は、コンテンツそのものにあります。『Dolby Atmos』や『Sony 360 Reality Audio』で制作・ミックスされた音楽の数が、これらのフォーマットに対応するストリーミングサービスが増えているにもかかわらず、まだ少数に留まっているのです。」
車内の特定の場所がスピーカーとして機能するスピーカーレスシステムを搭載したコンセプトカーが既に一部公開されている。同様に、ヘッドライニングやAピラーなどにスピーカーを搭載するOEMも増えてきた。Futuresource Consulting社は、長期的には耳に近い位置にあるヘッドレストにスピーカーを設置するケースが増えてくると予想している。これにより、よりイマ―シブな体験が可能となるだけでなく、車内にサウンドゾーンを設けて、乗員が好みに応じてコンテンツを一緒に体験したり、個別に体験したりすることも可能となる。
エンターテインメントを中心とした未来
Jornod氏は、「電気自動車の未来を考えると、自動車が長距離を走行するためには充電が必要となり、そこに新たなエンターテインメントの消費の機会が生まれます」と語り、こう加えた。「走行中は、受け身なエンターテインメント体験ですが、充電停止時にはフルアクティブな体験に切り替わります。テスラはすでに、車を充電しながら、乗員が車内でNetflixの映画を見たり、ビデオゲームをしたりすることを可能にしています。これらの充電時間の過ごし方は、完全な自動走行に移行した際に登場するエンターテイメントシステムの前触れです。」