この1年半の間、新型コロナウイルスの度重なる感染爆発に立ち向かう中で、世界中の医療現場は非常に大きなプレッシャーにさらされてきた。ワクチンの投与やコロナ感染者の受け入れに関する新たなルールの導入など、迅速に対応してきた地域もあるが、医療業界の慢性的な問題が露わになった地域もある。そんな中、キオスク端末をうまく利用することで、医療現場の負担を軽減できるかもしれないのだ。
Futuresource Consulting社は25年以上にわたり、プロフェッショナルディスプレイ分野のあらゆる側面に関し、アドバイスを行ってきた。「The Future of Large Format Kiosks（大型キオスク端末の未来）」に関する最新の調査では、新型コロナと関係の無い通常医療が1年半にわたって滞ったことで悪化した、医療の質、スタッフの管理、高騰するコストの問題に対し、キオスク端末がもたらす潜在的なメリットが明るみになった。
医療機関におけるキオスク端末は、依然未開拓の市場
「すべての人にワクチンを」という普遍主義により、将来のパンデミックに備え、グローバルに展開するヘルスケアシステムの必要性が叫ばれている。キオスク端末技術は、今の医療現場で切実に求められている効率性と接続性を備えており、その恩恵を受けられるだろう。
Futuresource社は、2021年から2025年までの年平均成長率を13%と見込んでいる。しかし、キオスク端末が提供する付加価値という点では、医療分野はこれまでニッチな市場であり、十分に浸透していなかった。多くの病院には、院内の案内、受付、処方箋の調剤などの目的でキオスク端末が設置されている。しかし多くの国の小売業や運送業がロックダウン後に後れを取り戻し、客足を増やしたような変革は起きていない。
キオスク端末は小売業では定着しており、今後の成長が期待されている。キオスク端末が潜在的に導入可能な市場の44%はファストフードレストランで、エンドユーザーへのキオスク端末技術の導入に一役買っている。次に大きいのは運輸業で、これは既存のプロセスの多くがコスト削減のために自動化されているためだ。
医療における大型キオスク端末の利点
医療分野では、キオスク端末はソーシャル・ディスタンスを確保できるというメリットがある。新たな変異株の驚異もあるため、距離を取って診察できることが望ましい。しかし、潜在的なメリットはそれだけではない。熟練した医療スタッフは人件費が高い上に不足しているが、キオスクの持つ接続性により、問題を軽減することができる。患者は世界のどこにいても医師とつながることができ、ひっ迫している地域の負担を、余裕のある地域に分散させることができるという利点があるのだ。また、医療の競争を促進することで、質の向上と価格の低下を促すことができる。
多くの国で治療が滞っており、リソースが不足している中、センサーを内蔵した大型キオスク端末は、今後の予防医療の取り組みに役立つはずだ。キオスク端末には多くの診断センサーを組み込むことができるため、モバイル機器を利用するよりも効果的だ。BMI、血糖値、血圧、心拍数を測定するインタラクティブな健康診断は広く普及しているが、超音波プローブキット、リアルタイムで最新情報を表示する多機能ウェアラブル端末、AIによる顔認識で感情を検出するなどの機能も医療業界で見られるようになってきた。キオスク端末の健康診断にさらなる革新が起これば、医療サービスへの負担が増える前に、より多くの病気を早期に治療することができるようになるだろう。
医療用キオスク端末への参入障壁は緩和される見込み
新しいテクノロジーにすぐに飛びつく裕福な国でさえ、コスト削減、効率性の向上、スマートデータの統合によるリソースの最適化など、キオスクがもたらす付加価値をまだ十分に認識していない。資金不足や既存のインフラに依存していることに加え、医療機関からの認知度が低く、さらに多くのエンドユーザーが、人との対話でなくキオスク端末を受け入れることに消極的であるためだ。しかしコロナ禍で、市民がこの手の技術的変化に直面する機会が増え、業界は更なる革新を余儀なくされているため、Futuresource社ではそうした障壁は急速に衰えると予想している。