フューチャーソース・コンサルティング 最新市場 分析レポート

Vol. 235

2022年におけるストリーミングの消費者行動の心理変化

2022年01月28日

プレミアムストリーミング・デマンドビデオの展開は、パンデミック以降の2年未満で密度の濃い、別の局面に入りました。私たちFuturesource Consultingの調査が示すように、2019年末以降、オンデマンド・サブスクリプションビデオ (SVoD) の登録者は計5億人以上増加しました。これにより、世界中でプレミアムストリーミングの利用が増加または加速したことが浮き彫りになっています。国際的な拡大に伴い、D2Cサービスの継続的な勢いが原動力となって新しいサービスが始まりました。しかしながら、消費者が2021年から2022年へとサービスを先送りしたことが影響し、NetflixやDisney+などの主要サービスが、想定内とはいうものの、著しい減速を報告し、2021年には予想通り、ストリーミングビデオ登録者の減速が現実のものとなりました。

さらに、基本的な消費者行動が示唆しているのは、消費者がSVoDサービスを管理する方法が変わるかもしれないということ、また、米国のような確立した市場では特に、実りの多い「サービススタッキング」の時代が終わるかもしれないということです。

Futuresourceの2021年 Living With Digital Consumer Research は、SVoDポートフォリオに関する消費者の考え方がそれぞれ異なっていることを強調していますが、これは、当面は、SVoDプロバイダーの解約防止対策が登録者獲得対策と同じように重要であるということを意味しています。2021年後半のサービスキャンセル傾向は、それ以前に行われた2回の調査との比較で著しく増加しました。これはすべての種類のサービスで明らかであり、NetflixやAmazon Prime Videoの「ユーティリティ」プラットフォームなどにおいてさえ、キャンセル傾向が高くなっています。サービスが付属していることや、キャンセルの手続きに積極的に時間をかけたくないという一般的な傾向があるため、キャンセルの意図をそのまま実行に移す可能性は非常に低いとはいえ、それでもこのような心理はとても衝撃的なものです。概ね4分の1以上のSVoD登録者が、効果的に「得をしようとして」、翌年、キャンセル後にさらにサービスを追加して再開するつもりであると話したことを考えれば、その意味はさらに重くなります。

キャンセルやサービスの乗り換えの意向が増えていることが暗い見通しを提示している一方、これとは対照的な事実として、欧州のSVoD登録者の約3分の1および米国のSVoD登録者の40%以上が、12ヶ月以内に現在利用中のサービスに少なくとも1つ以上のサービスを追加すると話していますーー これは直近の流行の波以降の増加。これにより、規制緩和があっても新しいサービスやコンテンツの需要がなくなっていないことがわかります。以上の様々な発見により、将来的にはサービススタッキングよりもサービスサーフィンに向かう可能性があることがわかり、その場合、登録者は、継続的に新しいサービスを追加しますが、増やしていくというよりは既存のものと入れ替える可能性があります。それそのため、2020年に起きた複数サービスの利用の急増は、少なくとも複数のサービスの同時利用に関しては、減速し続けるでしょう。

また、SVoDサービスの採用・利用を単独のものとして捉えるべきではないことを念頭におくことも重要です。消費者のストリーミングビデオサービスのポートフォリオに関しては、欧州におけるBBC iPlayerなどのVoD (BVoD) サービス、特に米国におけるPluto TVなどの新しい流れのAVoDサービスなどと関連しています。 トランザクション型デジタルビデオサービスやPay-TV/ケーブル、従来のビデオ視聴も忘れてはいけません。また、消費者がSVoDサービスを利用すればするほど、上記のような他のプラットフォームのコンテンツを消費する傾向が高くなることは周知の事実です。

AVoDサービスの新たな波とFASTチャンネルが大きく話題になり、米国の消費者は、月間でAVoDサービスを少なくとも1つは視聴し、これは今や米国内では多くの消費者が定期的に視聴するサービスになっています。主要サービスの国際的な成長も明らかですが、欧州における浸透はより困難であることがわかっています。BVoDの根強いレガシー、より限定的な局地的コンテンツ、分散された広告、地域全体にわたる放送の状況からわかることは、TVメーカーとの連携や、さらに長い目で見れば、地方放送局との連携が、利用者を増加させるために益々重要になるということです。

新たなストリーミングビデオサービスが展開する中、2022年の全体の状況は、消費者のビデオ消費と同様に、引き続き一層分断化されていくでしょう。円滑な視聴体験を提供するためには、これまで同様、すべての事業モデル全体のアグリゲーターに注目することが重要になっています。最大手のメディア・テクノロジー企業がこぞって究極のスーパーアグリゲーターになろうとしていることから、2022年のストリーミングビデオ界は、近年私たちが目にしてきたどの1年にも引けを取らない、興味をそそる1年になるかもしれません。