バーチャルアシスタントは家電メーカーや自動車メーカーに大きなビジネスチャンスを提供し続けている。Futuresource Consultingの最新レポートによれば、2022年のバーチャルアシスタント対応機器の出荷台数は世界全体で21億台になる見込みだ。新型コロナウイルスのパンデミックの時期には、多くの消費者が家電製品の購入を前倒ししたことでバーチャルアシスタント市場は大きく動いた。そうした時期を経て、今年の市場の成長率は2%程度に抑えられそうだ。
「パンデミックによって引き起こされた混乱に続く大幅な回復を経て、バーチャルアシスタント市場のいつも見慣れた上向きの流れは今年、小さくなるだろう」と説明するのはFuturesource Consultingの主席技術アナリスト、Simon Forrestだ。「継続的な半導体不足とそれに伴うサプライチェーンの混乱、そして世界の経済状況が全体的に悪化していることがバーチャルアシスタント対応製品の出荷にブレーキをかけている」
トップを狙うグーグルアシスタント
プラットフォーム別では、Googleアシスタントの市場シェアが現在、最も大きい。世界のバーチャルアシスタント対応機器のほぼ2台に1台はGoogle Assistantに対応している。これは主に、Google Assistantがアンドロイドのスマートフォンに搭載されていることに起因する。2位はAppleのSiriで、バーチャルアシスタント対応機器のほぼ4台に1台が対応。これはiPhoneとAirPodsの売り上げが順調であることを反映している。AmazonのAlexaは3位で、世界の音声対応機器の6台に1台に採用されている。
地域別に見ると、アジア太平洋地域が世界の音声対応機器の出荷台数の46%を占めて断トツの1位だ。29%のアメリカや欧州・中東・アフリカ(合わせて25%)を大きく引き離し、勢いが衰える気配もない。
家電向け音声認識技術の見通し
「将来に目を向けると、2026年には販売される家電製品の4台に3台は音声アシスタント機能を内蔵もしくはしているか、音声アシスタントに対応しているかどちらかだろう」と、Futuresource ConsultingのSimon Forrest主席技術アナリストは言う。「ベンダーがこの技術から手を引く気配はなく、それどころか、音声インターフェイスの対話型プラットフォームへの導入拡大に向けた投資は続いている」
Futuresourceの予測では、バーチャルアシスタント対応製品の出荷台数は2026年には31億台近くに達し、22〜26年の年平均成長率(CAGR)は10%になるとみられる。市場の拡大に伴い、世界で使われているバーチャルアシスタント対応機器の数(インストールベース)は今年の65億台から、2026年には82億台に増加するだろう。
インテリジェント・コンピューティングの未来
バーチャルアシスタントの音声処理技術は成熟しつつある。今後は別の分野に軸足が移るだろう」とForrestは言う。「音声技術のデバイスへの搭載を拡大する動きの中で、AIの改良と言語モデルの最適化が時代の趨勢となるだろう」
「さらに、バーチャルアシスタント技術で業界を牽引する企業はすでに、環境知能の世界に舵を切りつつある。環境知能では、AIとコンピュータがあらゆるものをカバーする一方で、環境へさらに深く統合されることによってユーザーから意識されなくなっていく。これは、音声インタフェースがさらに賢くさらにパワフルになると同時に、さらに多くの製品に組み込まれる未来だ」